【書評】「炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】」

これを読めば、「糖質制限」をすんなり始められる(かも)

この本を一読し、「人類は糖質の少ない食性だった」と理解できました。

そのことを説明するための掘り下げ具合がハンパないです。笑

細胞(生命体の共通祖先)の話まで出てきますから・・・。

単純に「糖尿病の原因は糖質!」みたいな内容ではなく、なぜ糖質に依存するようになったのか、因果関係などが詳しく説明されています。

他にも、「低身長の原因が糖質食」というのは新たな発見でした。

それらを含めて、以下のような方に読んでほしい一冊です。

  • 「我が家はご飯大好き低身長家族!」という人
  • 「主食がご飯(パン)」が前々から納得できなかった
  • 糖質制限を継続できないでいる
  • 通院しているのに糖尿病が悪化している

糖質が低身長、不健康の原因

【Q】昭和世代と弥生時代、どちらが高身長だったと思いますか?

【A】答えは、「弥生時代」です。

実に、弥生時代の平均身長に追いつくのは、「昭和30年代」の事だそうです。
割と最近ですよね。

終戦日(昭和20年)から、10年後。
戦時中は、白米ばかり食べていた軍人さんに「脚気(かっけ)」が多かった事からも関連がある事がわかります。

何となく、「大昔のヒトはちっちゃい」「現代人は大きい」というイメージがあります。

思い込みでした。

日本人の低身長化は、穀物主体の食生活に変わってからだそうです。糖質主体で動物性タンパク質の不足した食生活の結果が「低身長」です。

更に仏教の布教により、「殺生はダメ!」という教えが広がり、動物性タンパク質不足が進み低身長が悪化・・・。

また、赤ちゃんの離乳時の死亡率上昇の原因も穀物主体の食生活とされています。各地の遺跡調査から、離乳食に「穀物がゆ」が用いられる頃から増えたそうです。

これは、現在のアフリカ各地でも報告されています。

ちなみに、弥生時代は、水耕栽培が盛んに行われているイメージです。でも、動物性タンパク質も豊富だったので、身長は縄文時代よりも伸びたそうです。

500万年の人類史が主体

「糖質主体の食生活は間違っている」を説明するため、500万年の人類史を遡ります。

それぞれの理由説明に付随して、単細胞生物、多細胞生物の進化の過程、27億年前に台頭したシアノバクテリアの大繁殖、糖質摂取でドーパミンが分泌される理由、脳のメカニズム、ヒトとチンパンジーの違い、更には、ヒトとボノボの共通点、そして、当時のセックス事情などなど、多岐にわたり話が展開されています。

それらを含めて、ヒトの食生活がどのように変わったのか、なぜ糖質に依存するようになっていったのかなど、わかりやすく解説されています。

また、内容ごとに読み手が感じる疑問をしっかり回収してくれるので、数学の「公式に丸投げ」のような事は無く、思考が置き去りにされることなく読み進めていくことができました。

裏表紙には、「縦横無尽に新説・仮説を展開しながら語る」なんて、書かれています。

まるで、「自分勝手に語っている」風を装っているものの、そうは感じません。

「経済のためにある糖質」に疑問を感じている私のような人間には、読み進めていくうちに感じる「気づき」や「疑問」に共感できる点が多く、自然と納得のいく内容でした。

移動(遊動)生活と人類の食性

【Q】人類史500万年のうち、移動生活は何年くらい続いたと思いますか?

【A】答えは、「495万年」です。

人類史上の「つい5万年前まで」は、移動しながら生活し、昆虫や小動物を主に食べていたそうです。

理由は、「そこらじゅうにいた」から。

わざわざ冒険して、食べ物を探しに行く必要のない生活が続いていたそうです。

また、「冒険」が現代人的な考え方です。

現代人的な思考を延長した先に、当時の生活を想定している研究資料は、ここでバッサリいかれることになります。笑

先史時代のヒトは、食べ物にあふれた平穏な毎日をただ食って、ヤッて、寝て、食べ物が無くなったら移動する。

そんな毎日だったそうです。

我々の祖先が長年歩んできたのは、想像もつかないくらいお気楽な生活。

ただ、「お気楽」かどうかを理解する思考も無かったでしょうね。

7万年前、「狩猟」に目覚める

この頃、狩猟に目覚めた人類。
道具を作り始める知恵が芽生えます。

この辺は、ドーパミンの話も関わってきます。

「人口密度が高くなったこと」がきっかけでドーパミンの分泌が増え、シナプスの発達が促されて、道具を作る発明家的なヒトが現れたそうです。

(ドーパミンは、後から「高血糖」と絡んできます。)

これは、社会性を持つアリなどでも見つかっていて、個体数の密度が高くなると脳が興奮状態となり、ドーパミンの分泌は活性化されるそうです。

そうして、移動生活を終える2万年前頃から、ようやく狩猟ができるようになるのです。

その後、地球環境の影響(最終氷期)もあり、定住化が進みます。

木の実に手を出す→運命の分かれ道

木の実を食べたヒトが現れました。

ここが、「加熱デンプン」へのファーストコンタクトになります。

ここでクイズです。

【Q】以下の3つの木の実、生で食べられるのはどれですか?

  • アーモンド
  • ピスタチオ
  • ドングリ

【A】答え

アーモンド:生で食える
ピスタチオ:生で食える
ドングリ:「クソマズ!」←初めて食べたヒトの感想を代弁

そんな中、火の扱いを覚えたヒトの中にチャレンジャー(好奇心旺盛なヤツ)が現れます。

「ドングリを焼く」ということを思きました。
食べてみたら、「甘い!」だったそうです。

しかし、その直後、大変な事が起こります。

加熱したドングリを食べたヒトの血管内は「高血糖」になってしまいました。

それを視床下部が察知し、A10神経からドーパミンが分泌された時、報酬系の一部に受容され「幸福感」が生じてしまいました。

つまり、「美味い」と感じてしまったのです。
これが、ヒトが加熱デンプンにハマるきっかけだそうです。

それが広まり、ヒトの食性は、「加熱すると甘くなる穀物」へと依存していきましたとさ・・・。

1万年前、「農耕」開始

移動を捨てた人類。

移動生活で何を食べてきたかなんて知りません。

本能的に、以下の味覚は分かります。

  • 「酸っぱい」 → 腐った肉(×)
  • 「苦い」 → 毒(×:植物のアルカロイド)」
  • 「甘い」 → 食べて良い(○)」

実際に食べるものは、親から子に教えられます。

また、定住によって住居近くで食料を探す課題に生じました。

そんな中、家畜のヤギのエサだった野生のコムギを焼いて食べたヒトが居ました。

ドングリ同様、「甘い」という事で食料に認定!
これが農耕に繋がっていったきっかけだそうです。

穀物が食料となり、農耕が始まったのは、「1万年前」のことです。
人類史上、たった「0.2%」の時間です。

ヒトの体がそんな短時間で変わったと考えられますか?

そして、現在。「穀物奴隷」の人類

デンプンは、穀物の非常用エネルギーとして根っこや実に備蓄してあり、生のままでは、動物や昆虫に吸収されません。

植物は、動物や昆虫などの移動できる生物に捕食されない独自のエネルギー源を確保する事で、足が無くても自生範囲を広げられました。

そのデンプンが「加熱」によってヒトの食料と認定され、現在の穀物大繁栄時代です。

しかし、この状況は、穀物がヒトの食料なのではなく、「穀物の生存戦略にまんまとヒトが乗せられている」という見方は、愉快であると同時に「納得」でした。

他にも、依存物質は、すべて穀物由来という事実。

糖質、カフェイン、ニコチン、コカイン、アヘン、すべて、植物由来の依存物質です。

これは、ヒトが利用しているのか。
それとも、植物に利用されているのか。

その意味が、サブタイトルである「植物VSヒトの全人類史」に繋がっているのでしょう。

読後感

とても読み応えがありました。

夏井先生の思慮深さ、造詣の深さ。

「これだけの知識を蓄える為に、どの位の時間を費やされてきたのか?」という事ばかりが、気になってしまいました。笑

私の脳みそでは、じっくり時間をかけないと理解できません・・・。

(まだまだ、理解できていない部分も多いです)

何よりも、間違いをバッサリ行く歯切れの良さに「スッキリ!」します。

そして、抱いていた違和感が報われました。

自らの生活の為、仕事の為、贅沢の為に都合のよい解釈を優先する人間と、その「違和感」と向き合い、人類史を紐解くところまで研究している異端者。

どちらが、人の健康、人の命を真剣に想っているでしょうか?

それを地で行く夏井先生の考えには、とてもポジティブな力を貰えた気分です。

おまけ

社会は、経済で成り立っています。
経済は、ヒトで成り立っています。

ヒトの行動は、気持ちに大きく影響されます。

「美味しい」という気持ちに刺激をもたらす糖質は、これからもヒトの行動を促す原動力となり、社会はそれを都合良く利用し続けるでしょう。

「糖質の善悪」は、今後も平行線をたどっていくように思います。それに、糖質が長寿に何らかの影響を与えている可能性も否定できません。

それでも、私は、自分の寿命が減っても「糖質制限」を支持していきたいと思います。

なぜなら、「寿命は延びても、糖尿病、認知症が増えている現代が違和感だらけ」だから。

私にとっては、糖質よりも、夏井先生の説明が報酬系を刺激してくれています。

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